2015/07/28
文/野岸 泰之 構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
バイクを売却するなんて、一生のうちにそう何度も経験することではありません。だから一般のライダーにとって、バイク買取のしくみや事情なんて謎だらけ。バイクブロスでは、元買取業者のX氏(仮名、現在は転職)への取材に成功し、買取業界の裏事情をあれこれを語ってもらいました。2回目となる今回は、買取業者との交渉テクニックを中心に聞きました。
─今回は買取業者との交渉術というか、少しでも高い査定価格が出るようなテクニックなどがあれば教えていただきたいんですが。
その前に、安く買われちゃうパターンをお教えしましょう。それは“10万円ぐらいになればいいな…”など、希望の金額を口にしてしまうことです。そうすると、もしそのバイクに10万円以上の査定がつく(価値がある)としても、買取業者は絶対に10万円以上は出しません。
“うーん、5万円ですねぇ”
“もうちょっと何とかなりませんか?”
“…では7万円で”
“もう一声!”
“わかりました! 8万円で! これが精一杯です!”
なんてやり取りで、結局8万円で買われてしまい、売る側も“まぁそこそこ値を吊り上げられたし、まあいいか”と、思わされてしまいます。
相手は百戦錬磨の買取業者ですから、希望金額を聞かれても正直に答えてはいけません。もし言うとしても、最初に電話で問い合わせた際の金額(これは新車同様など相当条件のいいケースの金額)か、それ以上を言うべきですね。
─なんだか海外の土産物店での駆け引きみたいですね(笑)。他にもそういうワザがありそうですが?
インターネットの一括査定だと多くの業者がコンタクトしてきますよね。そこで出張査定の日時を同じタイミングに設定すると、一度に複数の業者が競り合うことになって、査定額のアップが期待できます。個々の業者と交渉するよりは楽かもしれませんね。
なかには抜け駆けを狙って、約束より1時間早く来る業者もいます。そういう業者はどうしてもそのバイクが欲しいか、買取り台数の実績が必要など切羽詰まった事情がある場合ですから、交渉次第では高値での買取りが期待出来るかもしれません。
─買取業者との交渉って難しいイメージがあるんですが、コツはありますか?
当たり前の話ですが、業者がわざわざ出向いてくるのは“買取りをするため”なわけです。ですから、売り手側もきちんと“売りたいんです!”ということをアピールした方がいいでしょう。冷やかしじゃなく、ちゃんと売る気があることを示す、ってことですね。業者も人間ですから、冷やかし半分とか喧嘩腰の人物に対しては意地になったり“時間が無駄、もう買わなくていいや”と、帰ってしまうこともあります。
やはり人間としての基本的なコミュニケーションは大切ですね。その上で“引越しをするんで少しでも高く売りたいんです”とか“車を買うのに、ちょっと資金が苦しくて…”など、きちんと事情を話してくれれば、業者としても“もうちょっと色をつけてあげようかな…”という気にもなります。いわば情に訴える作戦ですね。
“え? そんなモンなの? ”って思われるでしょうが、業者としては、たとえば1~2万円高く査定額を提示すれば納得してくれるのであれば、さっさと契約を済ませて次の買取り先に向かいたい、というのが本音なんですよ。とにかく“買取ってナンボ”の世界ですから(笑)。
(次回もさらなる裏話につづく)