2015/08/11
文/野岸 泰之 構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
元バイク買取業者だったX氏に買取業界の裏話をあれこれ聞くこのシリーズ。今回はカスタムしてあるバイクやカスタムパーツの売買にまつわる話を中心に聞きました。果たしてカスタム車両を高く売る方法はあるのでしょうか?
─カスタムパーツをたくさん取り付けたバイクって、少しは査定価格がアップするのでは? と期待してしまうのですが、実際はどうなんでしょう…。
結論から言うと、カスタムパーツは取り外してバラバラに売った方が高く売れます。ただし、自分でネットオークションに出品したり、パーツ買取を行なっているショップに持って行くのは手間だし面倒ですよね。
─ではどうすればいいのでしょう?
実はカスタムしてあるバイクって、買取側としても非常に難しいんです。最終的にはカッコ良いか悪いか、個人の好みになってしまうので、このバイクをそのまま業者間オークションに出したらいくらになるのか予想が立てにくいんですね。ショップによっても好き嫌いと言うか得手不得手があって、全国チェーンの大手バイク販売の買取部門やメーカー系ディーラーなどは、ノーマル車両を好む傾向があります。少しでも高く売りたいのであれば、事前のリサーチなどで“カスタムやパーツの価値がわかるショップを選ぶ”ことが大切でしょうね。
─では実際に、査定現場で役に立つ交渉テクニックはありますか?
査定員にカスタムやパーツのすごさをどれだけアピール出来るかが重要です。たとえば、社外のリプレイスマフラーが付いているとして「マフラーを換えています」と言うだけだと、査定員から本部に伝える際にも“マフラー交換あり”という情報しか伝わらない。だから「これはヨシムラのチタンマフラーで、20万円で購入しました」というように、なるべく具体的にアピールすることが大事ですね。現場の査定員だけでなく本部の人間にも伝わってその価値がわかれば、査定額がアップする可能性があります。
査定員は常に「この人は本当に売る気があるのか?」を見ています。ですから“売る気を見せる”のも大切なんですね。たとえばカスタムパーツを買った時の段ボール箱や説明書なども揃えて家の前に出しておくのもいいでしょう。
以前買取に伺ったお客さんですごい人がいました。「このパーツは○○製で何年何月にいくらで購入。オイル交換は何年何月、走行○キロの際に○○製のオイルを使用」という具合に、マシンの整備やカスタムの履歴をびっしりと紙に書いて見せてくれたんです。ここまでされると買取る側もやりにくいんですが、逆にお客さんの気持ちに応えなきゃ、という気にもなり、ヘタな査定金額は提示できないな、と。
─ほかに何か交渉テクニックはありますか?
マフラーなどカスタムパーツを付けたままで査定してもらった場合は、金額が提示されてから「これをノーマルに戻すといくらですか?」と聞くと、たとえば「マイナス2万円ですね」なんて答えが返ってくる。同じように他の箇所も「じゃあこれを外すといくら?」なんてどんどん聞いていくと、査定員も混乱して最初に提示した価格との整合性が取れなくなってしまう場合が出てきます。そこをうまく突いて交渉すると、最初の査定価格より上がる可能性があるかもしれません。誰にでも通用する、ってわけじゃありませんけどね。
─なるほど。かなりレベルが高そうですね…。
ご自分で傷を付けずにキレイにパーツを外せる人なら、一度ノーマルに戻した状態で査定してもらって、金額が決定したところで「実はこれだけカスタムパーツがあるんですけど…」って後から出すと、その分だけ金額が上乗せされる可能性があるかもしれません。当然自分のところでパーツをさばける業者じゃないとダメでしょうけど。
あとは基本的なことですが、カスタムの有無にかかわらず、査定前にはバイクをきちんと洗ってきれいな状態にした方が絶対いいですよ。細かいところまでピカピカできちんと手入れの行き届いたマシンだと「普段から大切に乗っている人なんだろうな」と想像できるので、あまり細かいところまでチェックされない、つまり査定が甘くなる可能性もある、ってことです。