2015/03/17
文/野岸 泰之 構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
運悪くバイクで事故に遭い、壊れたマシンが家に放ってある…なんて人もいるでしょう。そのままでは動かすこともできないし、売れるかどうかもわからないからついズルズルと置きっぱなしに…なんてパターンが多いようです。そんな事故車ですが、果たして買取業者は買取ってくれるのでしょうか?
そこで今回は、実際に事故車の買取査定を依頼し、その様子をレポートします。
今回買取りをしてもらうのは、トライアンフ ボンネビルT214(2014年10月登録の限定モデル)です。まだ新しい車両ですが、残念ながら高速道路で転倒してしまい、無残な姿になってしまいました。買取出張査定の取材にご協力いただいたのは、前回の『バイク買取出張査定、実際に依頼してみました』に引き続き、バイク王の小林資さんです。
ネットで買取査定を依頼し、電話でなるべく詳しくマシンの現状を話すのは普通のマシンと同じですが、事故車だけに「査定の結果、値が付かず、リユース料が発生する場合もあることをご了承ください」と事前に念を押されます。
現場では前回と同様に、身分証明書や車検証の確認や事前の説明を受けた旨の書類にサインした後、査定がスタートしました。
ケータイで車体各部の写真を撮り、本部に送るなどの手順は、どんなバイクでも同じです。ただ、事故車の場合は傷の大きさやダメージを受けた部位のパーツの状態などを、より詳しく確認しながら査定作業が進んでいきます。では特にどんなところをチェックするのでしょうか?
「転倒車の場合は、ハンドルポストのアンダーブラケットにあるストッパーの状態をよく確認します。転倒すると必ず大きな力が加わる場所なので、ここを見ればだいたいどれぐらいのスピードで転んだか、などもわかるんですよ」と小林さん。
「エンジンを掛けてみていただけますか?」小林さんの求めに応じてオーナーがイグニッションをONにし、スタータースイッチを押しますが、何の反応もありません。「これは、始動不能ということになりますね…」考え込むように小林さんがつぶやきます。
この後さらに、転倒時の状況など、小林さんはオーナーに詳しく話しを聞きながら査定を進め、タブレットに各部分の評価を細かく入力していきます。
また、取れてしまったパーツなども写真に撮り、本部に送っています。客観的で正確な査定には、より多くの情報があった方がいい、ということなのでしょう。
ところで、事故車でも問題なく買取りはしてもらえるのでしょうか。
「弊社の場合は、動かないバイクや事故車なども含め、基本的にどんな状態のバイクでも買取査定に伺わせていただきます」と小林さん。査定の結果、値段が付かずにリユース料が発生することもあるらしいですが、引き取らずにそのまま帰る、ということはまずないと言います。
査定が終わり、オーナーと小林さんで、買取価格についての話が始まりました。このボンネビルT214は限定車なので査定金額が上がるのでは? とオーナーはアピールしますが、小林さんの答えは意外なものでした。
「タンクやフェンダーに傷や破損がありますが、まだ新しい車両なので直して販売するとしますよね。それには同じ限定モデルの新品タンクやフェンダーを用意するか、同じ塗装をするしかないわけです。その分、我々としてはコストがかかってしまうんですよ」
なるほど、整備してすぐに走る車両と違い、修理が必要な場合は限定モデルで新しいからこそ、中古部品も出回っていないため、買取った後に修理して販売するのも逆に大変だということですね…言われてみれば納得。
小林さんはオーナーとあれこれ話し、ケータイで本部と何度か相談しながら買取金額が提示されました。最終的な金額はシークレットですが、事前にディーラーで尋ねていたおよその値段とほぼ近い線まで交渉できたようです。乗ることもできず、家に放置するわけにもいかない事故車を買取ってもらい、換金できるならラッキーだとオーナーも納得した様子でした。
というわけで、事故車でもちゃんと買取りしてもらえることがわかりました。